TRIANGLE STRATEGY(トライアングルストラテジー)
二週目で真エンドルートをクリアしたので、感想や紹介などを書いておきます。
仲間ユニットの詳細な感想については別な記事に書いています↓
スクエニの新作タクティクスRPG。タクティクスオウガとかFFTのような、高低差や位置取りが重要となるシミュレーションゲームです。
オクトパストラベラーなどに代表されるHD-2Dというグラフィックが搭載されていて、昔のゲームのようなドット絵でありながら、とても綺麗で美しいのが特徴的。
このゲームが発表されてから最初に6~7話だけ遊べるデモ版というものが配信されていたのですが、話があまりに途中すぎて正直あまり良い印象が持てませんでした。
その後、発売日が近付いてから最初から遊べる体験版が配信され、一応やっておくか……とダウンロードしてみたところ、めっっっちゃ面白かった。
その日のうちに予約して、発売日を今か今かと待ち続けていた覚えがあります。
発売後も奥深くて引き込まれるストーリーに、頭を使って勝利したときの達成感が素晴らしいバトルシステムに惹かれ、あっという間に一週目をクリア。
このゲームの魅力については後述しますが、私はとても楽しめました。でも、あなたが楽しめるかどうかは分かりません。人を選ぶ作品だと思います。
3話まで遊べる体験版(製品版に引き継ぎ可)が配信されているので、気になった方はまずそちらを遊んでみることをオススメします。
以下、このゲームの紹介と感想です。
重大なネタバレとかは特に無いので、買おうかどうか迷ってる方は参考にどうぞ。
(プレイ時間は一週目クリアで30時間くらいです)
重く、苦しく、暗いストーリー
物語の舞台はノゼリアという大陸で、三つの国に勢力が分かれています。
緑豊かな大地を有するグリンブルク王国、製鉄技術に長けて強力な兵団を有するエスフロスト公国、生活に必須である塩を唯一生産できる塩湖を有する聖ハイサンド大教国。
かつては塩と鉄を巡って大陸全土を巻き込む泥沼の争いが起こっていたものの、最終的には痛み分けという形で戦争は終結しました。
かつていがみ合っていた三国が手を取り合う……と思ったら再び戦乱が始まってしまった、というのがこのゲームの序盤に起こる内容です。
主人公は王国の三大公爵家の一つであるウォルホート家の嫡男、セレノア・ウォルホート。
病床の父シモンから家督を譲られ、ウォルホート家を率いる当主としてこの戦乱に向き合います。ロイみたい。
物語の序盤からいきなり守るべき王都が陥落させられ、ウォルホート家は二国に挟まれて孤立無援という前途多難な状態で戦乱が始まるものですから、もう大変。
明日も希望も見えない戦いが繰り返され、兵も民もただただ疲弊していくという戦の虚しさを叩きつけられるという重苦しい展開が続きます。
一時凌ぎには成功したもののジリ貧になったり、起死回生のために打った策が裏目に出たり、苦渋の決断で選んだ作戦が最悪な結果に終わったりと、とにかく重く、苦しく、暗いストーリーです。
ただ、それでもセレノアたちは這いつくばってでも前に進んでいく。決して陰鬱なだけの物語ではありません。
いわゆる剣と魔法のファンタジー世界なのですが、物語の規模としては地味な部類だと思います。
大軍を一人でどうにか出来るような大英雄などは存在しないため、数で劣るウォルホート家はいつも悩みに悩んで打開策を見出すことになります。
そういった地味さや重苦しさが受け入れられる・むしろ好みという人にはハマるのではないでしょうか。
丁寧に作り込まれた奥深いタクティクスバトル
本作は高低差や位置取りが重要となる、クォータービューのタクティクスバトルが採用されています。要するにタクティクスオウガです。
どのマップも敵やギミックが上手い具合に調整されていて、毎試合頭を使いながら勝利に導いていくのが醍醐味。作戦が上手くハマったときの快感はたまりません。
マップが狭くすぐに交戦できるような配置となっており、退屈な移動時間も少なく、一試合がそこまで長くないのも嬉しい。
特筆したいのは、丁寧に調整されているなぁと感じられる敵のAIの賢さです。
一心不乱に突っ込んで来るようなタイプや、攻撃範囲に入ってくるまで待ち続けるようなタイプは少なく、仲間同士で連携するような動きをしてきます。ボスも同じように、孤立するまで待ち構えるようなことはなく、仲間を引き連れてこちらを攻め崩そうとしてきます。
下手に突撃しても返り討ちに遭い、ガン待ちをしようとすると数の差で圧し潰されて負ける……。この敵の賢さによって、如何にして守るか、どこで攻めに転じるかという一筋縄ではいかない駆け引きが生まれるのだと思います。
難易度はベリーイージー、イージー、ノーマル、ハードの四段階に分かれていて、いつでも変更が可能。自分には難しいなと思ったら一段階下げるようにすると良いかも。
ノーマルがシミュレーションやタクティクスの経験者向けなので、体感としては他のSRPGのハードくらいの難しさがありました。
難易度によるボーナスやデメリットなどは無いため、ハードは完全に自己満足のためだけのもの。ハードクリア特典なども恐らく無いと思います。
難易度調節が楽なことに加えて、レベル上げや再トライも楽だったりと、新作らしくユーザーフレンドリーなところも評価点。
挑戦したマップで全滅したり、撤退してやり直しをする場合、そこで稼いだ経験値は引き継ぎとなります。リトライしてもそれまでの時間が無駄にならないというのは嬉しいですね。
また全てのマップには推奨レベルというものがあり、そのレベルに届いていないユニットは取得できる経験値に大幅な補正が加わります。何らかの行動をするだけでレベルが上がるため、育成が遅れていたユニットもすぐに推奨レベルまで引き上げられるのは楽で良いですね。
シミュレーション好きに向けた難易度の高いバトルが楽しめる一方で、ちゃんと初心者も楽しめるように工夫が施されているように感じました。
こういったタクティクスゲームの入り口としても、すごく良い出来なんじゃないかと思います。話の内容は重いけど……。
マップによって使い分けることが重要な、一芸に秀でた仲間たち
仲間になるユニットは主人公を含めて全部で30人ほど。
ルートによって加入するユニットが変わったり、プレイの仕方(後述の『信念』が影響)で加入順が変わったりするので、人によってユニットに対する印象や評価が変わりそうな感じ。
丁寧に作り込まれたバトルが魅力的だと言いましたが、この30名の味方ユニットたちもとても丁寧に調整されています。
どのユニットにも何かしらの一芸に秀でたところがあり、マップやシチュエーションをちゃんと見極めれば活躍してくれます。
他に比べて使い勝手の良い、強いユニットというのはもちろん存在しますが、決してそいつ一人で無双することは出来ません。誰しも何かしらの長所があり、何かしらの欠点があります。
普通にやってる分にはバランスブレイカーが存在しないため、最後まで頭を使ったタクティクスバトルが楽しめるようになっているのが良いところだと思います。
先程述べたようにレベル上げは簡単なので、控えに回しっぱなしだったユニットもすぐに推奨レベルまで追いつけて、色々な戦術が試せるようになるのも嬉しい。
バランスブレイカーが存在しないとは言いましたが、決して整い過ぎて単調でつまらないというわけではありません。
やりようによっては敵を纏めて片付けたり、ボスを一気に仕留めたり、窮地をひっくり返せたりなどが可能で、そういう策というか抜け道のようなものを閃けたときの爽快感は最高。
人の意見を見て「このユニットにはそんな使い方があったのか!」などと驚くこともしばしば。無数の戦略があって楽しい。
投票と信念で決まる分岐
本作はストーリーの分岐点がとても多く、重要な決断を幾度も迫られます。
例えば、敵国に対して自国の王子を差し出すか、差し出さずに徹底抗戦するか、など……。当然ながら選んだ決断によってその後の展開が変わってきます。
差し出さずに徹底抗戦するのは、王国の臣下として、人としては正しい。でも、勝てる見込みの乏しい戦いを挑むのは無謀とも言える。
王子を差し出して戦いを避けるのは、王国の臣下としては恥ずべき行い。でも、わざわざ負け戦に挑むよりは現実が見えているとも言える。
このように、迫られる決断はどちらが正解とは言えないものばかり。それ故にプレイヤーは、毎回頭を悩ませることになるわけです。
これらの分岐で何を選ぶかは、プレイヤーではなくキャラクターが決めるのが本作の特徴。
メインとなるキャラクターが主人公を除いて7人いるため、その7人で投票による多数決を行なって決定されます。キャラクターの性格ごとに、どの案を支持するかは傾向が異なります。
それに対してプレイヤーは何も介入できないのかというと、投票の前に各キャラクターに対して説得をすることができます。
プレイヤーが選びたい方の分岐が採決されるように、逆の意見を支持する(もしくはどっち付かずの)キャラクターを説得できるというわけです。
説得の際に必要となってくるのが主人公の『信念』。
信念にはMoral、Benefit、Freedomの三種類があり、これまでの主人公の選択や行動によって上がっていきます。物語の分岐点以外でも、様々な三択の質問を受けることがあり、これに対してどう答えるかで該当のステータスが上がります。例えば利益や現実を重視した回答をするとBenefitが上昇する、という感じ。
そして、決断の際にMoralの選択を選びたいとなっても、主人公のMoralが低ければ説得力が無くてキャラクターたちは賛同してくれない、となるわけです。
信念のステータスはマスクデータとなっており、何がどれくらい上昇したとか、今の値はどれくらいだとかは、プレイ中に確認する手段がありません。
と言っても序盤~中盤のうちは特に信念のことを気にしなくとも、プレイヤーが行きたい分岐を選べるようになっています。(必ずどっち付かずのキャラが一人いて、その一人はどちらに説得しても賛同してくれるため、多数決でギリギリ勝てるようになっている)
ただ、後半になってくると状況が変わってきて、主人公の信念次第ではどうしても賛同してもらえない選択というものが生じてきます。これもまた面白い。
自分の思うがままに選択をしていってどうなるかを見ていくのも良し。最初からMoralに偏って進めるなどと決めて、三択でどれがMoralっぽい回答かをじっくり考えながらやるのも良し。説得を全くせずにキャラクターの意思に全て委ねてしまうも良し。プレイスタイルに合わせて好きなようにすると良いでしょう。
クリア後に具体的な信念の数値は公開されるのですが、それも人によって千差万別になるのも面白いですね。ちなみに私はBenefit>>Moral>Freedomくらいになっていました。
まとめ
タクティクスゲームとして高い完成度を誇り、苦渋の決断を繰り返しながら進むという重苦しいストーリーもまた魅力的。
また、懐かしさを感じさせながらも、最新の技術で丁寧に描かれたHD-2Dというグラフィックは、ドット絵好きにはたまりませんでした。
総じてこの時代にこんなタクティクスRPGがやりたかった!という理想を叶えてくれた傑作だと思います。
システムの細かい不便な点だとか、シナリオの納得いかない点などはもちろんあるものの、それを補って余りある魅力的なゲームだと感じました。
個人的にはこれがものすごく売れて続編(ないし別の)タクティクスRPGが出ることになったら嬉しいな~とは思うものの、やはり万人受けはしないだろうなというのが正直なところ。
この記事を読んで興味を持って下さった方は、是非とも体験版を遊んでみて下さい。よろしくお願いします。